エイジングケア製品中有効成分の浸透評価 イメージング質量分析事例紹介
目次
はじめに
イメージング質量分析(Imaging Mass Spectrometry:IMS)は、ターゲットとなる分子(代謝物、投与薬剤など)が、生体内組織のどこに、どのくらい存在するのかを可視化する方法の1つです。
多くの人が普段使用している化粧品やヘアケア用品は、組織(肌や髪)に浸透して機能を発揮するものです。現在では「浸透力」を上げるための「導入型化粧水」まで発売されるほど、肌や髪への目的成分の「浸透力」は重要です。
イメージング質量分析と有効成分の浸透
皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織と構成され、表皮はさらに角質層、顆粒層、有棘層、基底層からなっています(図1)。
また、毛髪は外側からキューティクル、コルテックス、メデュラで構成されています(図2)。


このうち角質層/キューティクルは外的な刺激からの保護や内側からの水分の蒸発防止(保湿)に重要な役割(バリア機能)を果たしているため、化粧品やヘアケア製品を肌や髪に塗っても、このバリア機能によって、目的成分は組織内部へは届きにくくなっています。
目的成分を皮膚/毛髪へ浸透させるにはバリアを突破する工夫が必要であり、多くの研究がされています。
最初の項目で述べたようにイメージング質量分析は「ターゲット分子」が「どこに」存在するかを見ることができるため、「目的とする成分」が「角質層」まで届いているか、有効成分の浸透評価が可能です。
イメージング質量分析を用いた浸透評価事例
皮膚モデル(EPIモデル)の美容成分浸透評価

黄色:美容成分A、赤色:美容成分B
それぞれの美容成分の皮膚への浸透性の違いを評価できます。
まとめ
皮膚や毛髪への目的成分の浸透は、化粧品やヘアケア製品の機能の証明となります。浸透力の向上で目的成分がどこまで浸透しているのか、イメージング質量分析で「浸透力」を見てみませんか?
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