質量分析イメージングを用いた昆虫分析例のご紹介


今回は質量分析イメージングを用いた昆虫の分析例をご紹介いたします。

ヒトやマウスだけでなく昆虫体内における生体分子や薬剤などを可視化することで、多くの有用な情報を得ることができます。



ハエ体内に取り込まれた殺虫剤イミダクロプリドの分析


まずは、ショウジョウバエ体内での殺虫剤の可視化例をご紹介します。

イミダクロプリドは農作物の害虫駆除に広く使用されている殺虫剤です。

投与された後の殺虫剤の昆虫体内での分布情報は、より効果の高い薬剤の開発などにつながります。ただし昆虫の体は脆い構造をしているため切片作成が困難です。

さらにモデルとしてよく用いられるショウジョウバエはサイズが小さく、分析はより困難になります。

図1の例では、切片作成条件を工夫してイメージング質量分析を行うことで、ショウジョウバエの体内のイミダクロプリドの分布の可視化に成功しました。


図1ショウジョウバエ体内におけるイミダクロプリドの分布Ohtsu, S. et al.Anal. Sci.34, 991?996 (2018).


図1を見ると、イミダクロプリドがショウジョウバエの腹部に集中して分布していることがわかります。


ハエ脳における神経伝達物質GABA の分析


次に、ハエの脳の神経伝達物質を可視化した例をご紹介します。GABA (γ-アミノ酪酸)は動物の脳組織などに多く含まれる代表的な神経伝達物質です。

動物だけでなく昆虫もGABA を神経伝達物質として利用しており、ショウジョウバエはよくアルツハイマー病やパーキンソン病のモデルとして利用されます。

これまで免疫組織化学や蛍光イメージングでの分析は行われてきましたが、直接GABA の分布を可視化した例はありませんでした。

図2はショウジョウバエ脳のGABA をイオン化しやすいよう組織上で誘導体化し、イメージング質量分析で可視化した例です。

ENOMOTO, Y.et al. Anal. Sci.34, 1055?1059 (2018)

このように、ショウジョウバエの脳のような非常に小さい組織でもGABA を直接可視化することができました。

まとめ

いかがだったでしょうか?今回は質量分析イメージングを用いた昆虫の分析例をご紹介しました。

動物組織だけでなく昆虫でも農薬や各代謝物等様々な分子を可視化できる可能性があります。

一見切片作成が困難と思われるサンプルも、ぜひ一度弊社ご相談下さい。