今回は、生命活動の維持に不可欠なエネルギー代謝と老化の関係について解説いたします。

ヒトをはじめとする生物の体内では、つねにエネルギーを使って合成や分解など多くの化学反応が行われ、生体の機能や構造を維持しています。また、運動、成長や増殖などもエネルギーを消費して行われる生命活動です。

 

生体の利用するエネルギー

生物は、高エネルギー化合物と総称される一連の化合物をエネルギーとして利用します。特にアデノシン3リン酸(ATP)は核酸の合成、タンパク質の合成、筋肉の収縮など生命維持に不可欠な反応に使われる最も重要な高エネルギー化合物です。ATPはアデノシンという化合物にリン酸が3つ結合した構造をしています(図1)。このリン酸同士の結合は非常に高いエネルギーを持っているので、結合が切れる時大きなエネルギーが放出されます。生物はこのエネルギーを様々な反応に利用しているのです。ATPからひとつリン酸がとれるとADP(アデノシン二リン酸)、2つとれるとAMP(アデノシン一リン酸)と呼ばれる化合物となり、それぞれ呼吸など別の反応系でまたATPへとリサイクルされます。

図1 ATP, ADP, AMPの構造式

ミトコンドリアとATP

ATPのおもな生産の場はミトコンドリアです。ミトコンドリアでATPが生産される際には必ず少量の活性酸素種(ROS)が生じ、これが加齢などによって蓄積してくるとミトコンドリア機能が低下し、老化の原因となるという説が以前から提唱されています。ミトコンドリア機能の低下は当然ATP産生の低下をまねき、エネルギー代謝のバランスが崩れます。

 

エネルギー代謝調節機構

生命維持に不可欠なエネルギー代謝のバランスを維持するために、生体内ではAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)という調節因子が重要な役割を果たしています。AMPKは細胞内のAMP/ATP、あるいはADP/ATPの比を検知してエネルギーレベルをモニターするセンサーとして働いています。運動や低グルコースなどで細胞内のATPが減少するとAMPKにAMPが結合し、ATPの合成を促進させエネルギー代謝の均衡を保ちます。このAMPKは老化の調節因子としてもまた重要であることが報告されています。

 

質量分析イメージングによる高エネルギー化合物の分析例

このようにエネルギー代謝と老化に密接な関係のある高エネルギー化合物は、質量分析イメージング技術を用いると直接分析することができます。酵素による発光など他にも様々な技術がありますが、質量分析イメージングでは生物組織の切片上でどこに、どれだけ高エネルギー化合物が分布しているのかを可視化することができます。図2はマウス脳でのAMPとADPの分布を可視化した分析例です。例えば老化モデルマウスと通常のマウスの組織を比較することで、老化によるエネルギー代謝の変化を視覚的に捉えることが可能です。

図2 AMP, ADPの質量分析イメージング例

まとめ

人口高齢化は全世界的に年々加速しており、老化に関する研究は今後ますます注目を集めていくと予想されます。弊社は高エネルギー化合物スキャンをはじめとする多様なサービスで、お客様の目的に合った分析系のご提案が可能です。ご興味をお持ちの方はぜひ下記までお問合せ下さい。